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動物福祉【フェレットの放し飼いは良い事?虐待?】日本は動物愛護ペット後進国

先日、「思い切って一部屋を完全フェレ部屋にしました。これでやっとケージを捨てられる。」と言う方とお話しをしました。

一部屋丸ごとが完全なフェレ部屋だなんてそれはとっても素敵な事ですが、だからといって、ケージは要らないという事にはならn…

「あったって邪魔なだけじゃない?放し飼いにして分かったんだけど、ガチャガチャうるさくされるストレスもないし、ぶっちゃけ掃除しなくて良いっていうのがほんと楽。ケージの掃除って面倒くさくて大変だったからもうケージ飼いには戻れないわ。」

なんだそっか。フェレットのためじゃなくて、自分のために自分の都合でそうしたって話なんだな、これは。
アタチはなこ
アタチはなこ

また、このようなDMが届きました。

『一番最初の子をお迎えした時にお店で言われるままケージを購入して使用していましたが、あれはお店の売り上げのための仕組みでしかないことが分かりすぐに処分いたしました。
私はフェレ歴15年になりますがもちろん一度も脱走させた事はありません。
失礼ながらいたちのおうちさんの記事では最近「ケージが無いと不適切使用だ」というような表現がとても多く、はっきり言って不快です。』

「~というような表現」ではなく、私はそう言っています。
アタチはなこ
アタチはなこ

これまでとてもまろやかにマイルドにお伝えしてきていたせいで、いまいち伝わっていないのかもしれないと思い、今日は動物福祉の観点から飼い主の責任や動物虐待について、公益社団法人「日本動物福祉協会」の其れに基づいて「フェレットの放し飼い」「ケージの必要性」についてお話させて頂こうと思います。

ポイント

動物愛護と動物福祉は完全に異なる考えです。
動物愛護=動物に対して人間がどう思うか。
動物福祉=動物にとって何が良いのか。
要するに、人間の勝手なメルヘン飼育理論で動物たちを死なせるような事があってはいけません。が動物福祉の基本です。

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動物福祉の観点から考えるフェレットの飼い方と虐待について

動物福祉とは

「動物が精神的・肉体的に充分健康で、幸福であり、環境とも調和していること」をいい、
自分の気持ちの思うままに、気の向いたときだけかわいがることは、動物福祉が満たされているとは言えず、「かわいがっている=福祉に配慮している」ではない

もともとはイギリスで家畜の劣悪な飼育管理を改善させ、家畜の福祉を確保させるためにその基本として「5つの自由」を定めた事が始まりです。

現在では、家畜のみならず、ペット動物・実験動物等あらゆる人間の飼育下にある動物の福祉の基本として「5つの自由」は世界中で認められ、EUではそれに基づいた指令が作成されており、世界獣医学協会(WVA)においてもその基本方針の中にそれは謳いこまれています。

動物福祉の基本(5つの自由)にフェレットの飼育をあてはめてみよう

  1. 飢えと渇きからの自由
    ・フェレットにとって適切かつ栄養的に十分な食物が与えられていますか?
    ・いつでもきれいな水が飲めるようになっていますか?
  2. 不快からの自由
    ・フェレットにとって適切な環境下で飼育されていますか?
    ・その環境は清潔に維持されていますか?
    ・その環境に風雪雨や炎天を避けられる快適な休息場所がありますか?
    ・その環境に怪我をするような鋭利な突起物や口にいれて危険なものはないですか?
  3. 痛み・傷害・病気からの自由
    ・病気にならないように普段から健康管理・予防はしていますか?
    ・痛み、外傷あるいは疾病の兆候を示していませんか?
    ・そうであれば、その状態が、診療され、治療されていますか?
  4. 恐怖や抑圧からの自由
    ・フェレットが恐怖や精神的苦痛(不安)や多大なストレスがかかっている兆候を示していませんか?
    ・そうであれば、原因を確認し、的確な対応が取れていますか?
  5. 正常な行動を表現する自由
    ・フェレットが正常な行動を表現するための十分な空間・適切な環境が与えられていますか?
    ・フェレットががその習性に応じて群れあるいは単独で飼育されていますか?
    ・また、離すことが必要である場合には、そのように飼育されていますか?

これを見て、「やっぱりケージ飼いはストレスになるから自由にさせてあげた方が良いのね!」は曲解です。

その自由はこの「5つの自由」には当てはまりません。

動物福祉の観点からもっと深く見ていきましょう。

動物虐待とは?

【動物虐待】とは「動物に不必要な苦痛を与える事」つまり、「動物の心身に肉体的な苦痛・精神的な苦痛・多大なストレス等を与えること」をいうのですけど、この辺りの事がどうしても「理解されてないんだな」って、何を言っても曲解論が出てくるのは、多分、この国がずっとそれでよしとしてきたなんかそういうののせいです。

この国のなんかそういうのっていうのは、「日本は先進国の中で唯一の動物愛護(ペット)後進国」って、かなり不名誉なことを方々から言われているんですけど、お偉いさん方は全く気にして無いっていうかなんて言うか…

で、そのせいで、先ほどお話しした動物福祉についての理解が全く広まらないし、もういい加減ペット先進国から見たら「それは完全な虐待よ」って行為でも特別な指導がどこかから入る制度もまだ無いし、それどころか、見るに見かねた善意のアドバイスにさえ虐待行為の正当化ってか逆ギレみたいな言い分が通っちゃたりして…ちょっと、虐待についてのお話しをさせて頂きますね。

虐待には2つのタイプがある

  1. 意図的(積極的)虐待=やってはいけない行為を行う・行わせる
    ・殴る、蹴る、熱湯をかける、動物を闘わせる等、身体に外傷が生じる又は生じる恐れのある行為、暴力を加える
    ・心理的抑圧、恐怖を与える
    ・酷使 など
  2. ネグレクト=やらなければならない行為をやらない
    ・健康管理をしない
    ・病気を放置
    ・必要な世話をしない
    ・劣悪な環境に動物を置くなど

「動物虐待」というと、殴ったり蹴ったり(意図的に)殺したり、みたいな残虐な行為ばかりを思い浮かべて「自分には関係ない」と思われている方も多いのですが、そういった「分かりやすい虐待」は起きている虐待行為の一部でしかありません。

「ネグレクト」って人に対してだけではないのですよ。

動物たちへのそれに関してはまだまだ感はそりゃ否めませんが、それでも、平成14年には、馬を衰弱させた事件の判決文の中で、「衰弱とまでいえなくとも、著しく不衛生なところで餌や水を十分与えず不健康な状態に陥らせることは虐待である。」と動物虐待の定義の内容に「ネグレクト」が書き込まれています。

ネグレクト=飼い主としてやらなければならない行為をやらない
  • 健康診断に連れて行かない。病気でも病院へ連れて行かない(健康管理をしてあげていない、病気を放置)
  • 狭い1ルームで10匹も20匹も飼ってる。狭いケージに5匹も6匹も押し込めてる(劣悪な環境)
  • 冷房や暖房を正しく使用してあげていない(劣悪な環境)
  • 脱走対策を何もしていない部屋で放し飼いをする(安全を保障する適切な環境を与えていない)
  • 等々

これらは全て、「ネグレクト」にあたるのですが、そういう認識を持っていないんじゃないかと思われる飼い主さんのお話しを時々ですが耳にします。

それもこれも全部、動物福祉における「飼い主責任」が正しく広まっていないからだと私は考えています。

飼い主責任とは?

動物を飼育するには飼い主が果たさなければならない2つの責任があります。
その責任が果たせない人は飼い主になるべきではありません。

2つの責任とは

  1. 動物に対する責任
    5つの自由に基づいたその動物にとっての快適な環境を与え、動物の心身の健康を確保し、動物が幸福であること。もちろん、緊急災害時においても彼らを守れるのは飼い主です。
  2. 社会に対する責任
    動物を飼育している人は、動物に対する責任はもちろんですが、社会に対する責任も負っていることを忘れないでください。
    例えば、飼い犬にしつけをして迷惑をかけないように、糞を放置したりして公衆衛生上の問題を起こしたりしないように、動物の生活環境や周辺環境を清潔にするなどして環境汚染を起こさないように飼い主は心がけなければなりません。個人飼い主であれ、動物取扱業者であれ、農場主であれ、実験動物の飼育管理者・実験者であれ、飼い主責任から逃れることはできません。

動物福祉の観点においてケージの用意が無い「完全放し飼い」は虐待行為にあたります

飼い主がペットに対しての責任に「緊急災害時」においてのそれがあります。

東日本大震災、あの時に「ケージにいなかった子達」がどうなったのか、その後も「ケージに慣れていない子達」がどういう状態にあったのか、私はボラとして生で見てきました。

また、「ペットが他者へ迷惑をかけないように」は社会に対する飼い主の責任です。

「(ケージがない飼育環境でも)脱走させた事はありません」って、脱走は、その子の生命に対しても無責任だし、周囲や環境にも無責任な行為で、「脱走させないのが当たり前」のことなのですよ。

日本動物福祉協会の言葉でそのままいえば、ケージ飼いが可哀想だというのは飼い主の無責任かつ独りよがりで勝手な思い込みで、ケージはフェレットの安全な暮らしを保障するものとして、彼らの飼育環境に必要なもの、飼い主として用意しておいてあげるのがその責任です。

まとめ

長々と書いてきましたけど、極論で〆ますね。

フェレットは外に出たら日本の野生の世界では生きていけません。

ていうか、死んでしまいます。

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私はこれまでたくさんの「脱走フェレット」に携わってきましたが、その中で、ケージから脱走して自分で部屋の窓やドアを開けて出て行ったという子の話は一度も聞いた事がありません。

みんな、放牧中や放し飼いの環境下で、飼い主さんが目を放したすきに、大丈夫だろうと思っている時に、人が開けた窓やドアから出て行ってしまっているんです。(※お散歩中にハーネスがすっぽ抜けた等もありますが、今日はもう長くなったので、お散歩についてはまたの機会にします。)

「放牧中は目を放さない、人間が責任を持って見ていてあげられない時は安全なケージで過ごしてもらう」そうやって、正しくケージを使用してあげておくだけで家からの脱走はほぼ確実に防げます。

室内飼いのペットが外で死ぬって、動物福祉の観点から言ったら「あり得ないこと」ですからね。

その責任が果たせない人は飼い主になるべきではありません。が、動物福祉の基本です。

ケージの必要性についてもっと具体的なお話、例えば震災の時の事や、猫にもケージが必要とされてきている流れ、みたいなものはこちらで詳しくお話させて頂いています。

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